「マネーの公理 スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール」マックス・ギュンター著をKindle版で読みました。
「公理」だから経済と投資の関連とか、市場法則とかの理屈の本かと思いきや、読んでみた感想は、スイス流お金儲けの指南書でした。
目次
はじめに 公理とは何か、どこからきたのか
第一の公理 リスクについて
第二の公理 強欲について
第三の公理 希望について
第四の公理 予測について
第五の公理 パターンについて
第六の公理 機動力について 根を下ろしてはいけない。それは、動きを鈍らせる
第七の公理 直観について 直観は、説明できるのであれば信頼できる
第八の公理 宗教とオカルトについて
第九の公理 楽観と悲観について
第十の公理 常識について
第十一の公理 執着について
第十二の公理 計画について
過去の結果は同じだけど、未来への考え方が違う
私が投資系の本で面白いと思うことは、
- 過去の相場の動きは決まった形で存在して
- おおよそ、同じ過去の結果を見ているけど
- 未来の利益を求める考え方や方法が投資家によって違う
ということです。
「マネーの公理」はアメリカで初版が1985年に出版され、原題は「The Zurich Axioms: The Rules of Risk and Reward Used by Generations of Swiss Bankers, 1985」です。
金融界のロングセラー。
本の中で、スイス流のマネーの公理として、分散投資をしない、強欲を控える、識別のある直観を感じる、などの教えが書いてあります。
マネーの公理の内容は、投資ブログや最近の本でも見かけます。
このような古典の名著から実践方法や考え方を学びつつ、現代の投資家も進化しているんだな、と思いました。
分散投資の誘惑に負けない
例えば、株で高いリターンを得るには、値動きの大きい株のほうが、儲かる金額も大きくなります。
これは個別株をやっていればよくわかります。
「分散投資は利益と損失が互いに相殺し合う」
その通りだと思います。
一方で、立場を変えれば、上下のブレ幅を少なくすることが、分散投資のメリットでもあります。
強欲を控える
「少額を儲け、素早く降りる。強欲に支配されるな」
投資を好きな人間ほど、欲が強そうなので、投資好きが強欲をコントロールするのは、本質的にとても難しいことだなと、自分も個別株を売買して感じます。
「欲しい利益を得たら速攻で撤退せよ」も大事だけど、中々難しいです。
曖昧さを排除し、直観を感じろ
チャート、盲信、ノスタルジー、愛着、星占い、大衆の意見、投資の流行、過度な執着、等などの根拠のない、曖昧なものに頼るのは止め、排除せよ。
さらに、長期投資も避けるように、と助言があります。
公理としてのアドバイアスは
- 識別を持って直観を感じろ
- その直感を生み出すほど巨大なデータ図書館が、あなたの心の中に存在しているか、自問せよ
- 直観と希望を混同するな
- 楽観のみで行動するな、自信は悲観を建設的に利用することから生まれる
直観の根拠を、理論を持って、しっかり見極めろ、ということでしょうか
自分の投資法と比べると面白い
私は世界に分散する、長期投資の、インデックス投資をしています。
本では、分散を避け、長期投資をするな、と助言しているので、自分の投資とは正反対な教えです。
理由の一つに時代背景の違いがあると思います。
昔に比べると、現代は圧倒的に分散投資が簡単になり、市場の効率化が進み(たぶん)、世界市場の連動性が高まっているからです。
もう一つの理由は、株の売買で高いリターンを求める、目的の違いがあると思います。
インデックス投資の目的は、市場平均のリターンを長期で得ることなので、富豪になるような高利益はハナから目指していません。
一方で、本に書いてある、
- 求める利益を得るために必要なリスクを負い
- 曖昧な感情を排して、識別に裏打ちされた直観を持ち
- 強欲をコントロールせよ
というのは、現代の投資でも非常に重要です。
インデックス投資にも、株の売買とは投資法が違いますが、当てはまる点は多いなと思いました。
この本のお勧めポイント
- 「マネーの公理」は、なんとなくでも、自分の投資方針がイメージできてから読むことをお勧めします。
- 適切なリスクを負う、曖昧なものを排除する、識別のある直観を感じる、強欲を控える、など投資に重要な考え方が学べます。
- 自分の考えに近いところ、真逆に感じるところはどこなのか、そう思うのはどうしてか、自分の投資法のメリットやデメリットを考えるキッカケになる本です。
- 翻訳の人が上手い、本の読み物としても面白いです。
少し投資を経験してから、この本を読むと、ピンと来ることが多いと思いますよ。